2014年6月6日金曜日

第7回ワークショップ 5/19(月)の報告

高野町史別巻『高野町の昔と今』

『高野町史』はこれまで近現代年表、史料編、民俗編が刊行されており、別巻「高野町の昔と今」が発刊され、編纂事業が終了した。近現代年表と民俗編はオールカラーであり、写真や図版を入れて分かり読みやすい構成を取ってきた。近現代年表では、各事項が掲載されている文献を網羅しており、異なる見解を調べることができる。民俗編は多くの写真や図版を掲載することによって高野山の信仰や周辺の村々の生活を記録した。史料編はこれまで紹介されることが少なかった高野山周辺の村々の近世・近代の古文書に光を当てることができた。これまで高野山を中心に考えられてきたが、高野町史は高野山とその周辺との関係性によって地域が形成されてきたことを示すという成果をあげたと言える。

今回の別巻「高野町の昔と今」は、オールカラーで絵図、古写真を多数使用している。また和歌山の歴史を語る際に利用されることが多い紀伊国名所図会や紀伊続風土記は、資料の原文とともに現代語訳が併記されている。これらは郷土史家のネタ本とされていたが、今回の試みによって歴史的な知識や古文書の読解力がなくとも、これらの原典を参照することが可能となった。また絵図は読み取り図や文字部分の活字化がおこなわれている。本書は、一般町民だけではなく、専門家の利用においても有意義である。
特筆すべきは、明治時代の高野山の寺院統合の地図とともに、寺院統合のリストが掲載されていることである。今後の高野山研究において基礎資料となるものであると考えられる。また、収集されている絵葉書が公開されてことも意義深い。現在の風景との比較において高野山をより知るとともに、世界遺産にふさわしい景観復元のヒントとなるものであるとともに、高野山の近代化の過程を示いている。観光バスの乗り入れに対応した道路拡張の結果として暗渠化した水路の図も示唆的である。古文書が木版刷りされた高野紙が付録とされていることも編集担当者のメッセージがこもっているとともに、歴史への想像力をかき立てる。
高野町史が通史編の刊行せずに終了するが、高野山上の歴史資料は手つかずのものも多くあり、十分に活用されていない。今後とも関係諸機関が協力し継続的に整理・利用していくことを期待する。

B4変形判・約660頁・価格3000円・郵送料610円
問い合わせ
高野町教育委員会
TEL 0736-56-2076
〒648-0211 和歌山県伊都郡高野町高野山486 高野町中央公民館内

0 件のコメント:

コメントを投稿